【書評】「エロ本黄金時代」 本橋信宏, 東良美季著…活字大好きな第一次オタクが実証する活字文化の終焉
【書評】活字大好きな第一次オタクが実証する活字文化の終焉
NEWSポストセブン2016.02.25 16:00
http://www.news-postseven.com/archives/20160225_387199.html
【書評】『エロ本黄金時代』/本橋信宏・東良美季著/河出書房新社/1700円+税
【評者】坪内祐三(評論家)
昭和三十三(一九五八)年生まれの私(たち)は第一次オタク世代と言われているが、つまり、それまでサブカルチュアーと思われていたものをカルチャーの栄養素として育っていったわけだが、それ以降の第二次第三次(今や第五次ぐらいに達しているのかも知れない)オタク世代と異なるのは、活字大好き人間であることだ。
少・青年時代、マンガ雑誌もさることながら活字雑誌もバンバン読んだ。そういう中で大学に入り卒業して行く一九七〇年代末から八〇年代初め、エロ雑誌が大きく変わっていく。つまり、読み物頁が充実していくのだ。
佐伯一麦や山田詠美、あるいは大塚英志をはじめとして、この世代にはエロ雑誌やエロ漫画で業界仕事を始めた人が多い。本橋信宏や東良美季も同様で、しかも彼らは、先行する末井昭や中沢慎一や櫻木徹郎や奥出哲雄らをエースとすれば準エースとも言える人たちだから、この二人が「エロ本黄金時代」を語ったなら、つまらないはずはない。その予想通り面白かった。しかもここにはとても大切なことが語られている。
出版不況についての言説を多く目にするが、大手新聞社や出版社の人間あるいはそこそこ売れている小説家のそれは殆ど説得力を感じない。それに対して、ここではとても怖しいことが実証されている。
かつて十万部以上越えていたエロ雑誌も二〇一三年六月号で『ビデオ・ザ・ワールド』が休刊し、『ビージーン』(旧『べッピン』)が二〇一四年十月号で休刊する。
これは単なる活字離れではなく無料でもっと過激な画像を見ることの出来るネット文化の普及のせいだが、エロ雑誌がすべて消えてしまったということは、つまり、活字文化の終焉が近づいているわけだ。その影響は五年後すなわち東京オリンピックが終わる頃に大変なことになっているだろう。恐怖だ。
※週刊ポスト2016年3月4日号
NEWSポストセブン2016.02.25 16:00
http://www.news-postseven.com/archives/20160225_387199.html
【書評】『エロ本黄金時代』/本橋信宏・東良美季著/河出書房新社/1700円+税
「エロ本黄金時代」 本橋信宏, 東良美季著(河出書房新社 1,836円税込)
商品基本情報
発売日: 2015年12月02日頃
著者/編集: 本橋信宏, 東良美季
出版社: 河出書房新社
サイズ: 単行本
ページ数: 259p
ISBNコード: 9784309024318
【内容情報】
雑誌の黄金時代、自由と夢を抱く男たちが築き上げたエロ本文化。現場の貴重な証言を満載しておくる、30年間の同時代史。1980年代に輝いた、エロ本という文化。
【目次】
極私的エロ本前史
八〇年代エロ本クロニクル
昔はよかったんじゃない 昔がまともだったんだよー八〇年代エロ本の製作現場はどうなっていたのか
日本出版史のターニング・ポイントー自販機本の世界
『ビデオ・ザ・ワールド』休刊に想う
縁は異なもの。ミスター・Oを待ちわびながらー伝説のエロ本ライター、奥出哲雄のこと
伝説の人 奥出哲雄ーエロ本にひとつの時代を作った男
「エロ雑誌一代」編集者、櫻木徹郎
社会に受け入れられない部分を本にするのがエロ本屋ー中沢慎一インタビュー
美少女伝説を創った男ー山崎紀雄物語
モデルの肖像ー野良猫のように自由で美しかった、エロ本の天使たち。
彼女の周りだけは八〇年代が続いているー女優・中村京子
熱海でも旅館でもなくー回想の一九八〇年代
エロ本が創りあげた写真の文化・文章の世界
エロは終わっているわけじゃないーデザイナー・有野陽一
エロ本が減っていくと同時に自由さも消えたーデザイナー・明日修一
不良やはぐれ者達の祝祭の真ん中でー編集者・曽根賢(ビスケン)
男たちの点鬼簿
アダルト業界壊滅前夜
【著者情報】
本橋信宏(モトハシノブヒロ)
1956年、所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。現在、都内暮らし。半生を振り返り、バブル焼け跡派と自称する。執筆内容はノンフィクション・小説・エッセイ・評論
東良美季(トウラミキ)
1958年、川崎市生まれ。國學院大學哲学科卒。編集者、AV監督、音楽PVディレクター、グラフィック・デザイナーを経て、2000年頃より執筆に専念
【評者】坪内祐三(評論家)
昭和三十三(一九五八)年生まれの私(たち)は第一次オタク世代と言われているが、つまり、それまでサブカルチュアーと思われていたものをカルチャーの栄養素として育っていったわけだが、それ以降の第二次第三次(今や第五次ぐらいに達しているのかも知れない)オタク世代と異なるのは、活字大好き人間であることだ。
少・青年時代、マンガ雑誌もさることながら活字雑誌もバンバン読んだ。そういう中で大学に入り卒業して行く一九七〇年代末から八〇年代初め、エロ雑誌が大きく変わっていく。つまり、読み物頁が充実していくのだ。
佐伯一麦や山田詠美、あるいは大塚英志をはじめとして、この世代にはエロ雑誌やエロ漫画で業界仕事を始めた人が多い。本橋信宏や東良美季も同様で、しかも彼らは、先行する末井昭や中沢慎一や櫻木徹郎や奥出哲雄らをエースとすれば準エースとも言える人たちだから、この二人が「エロ本黄金時代」を語ったなら、つまらないはずはない。その予想通り面白かった。しかもここにはとても大切なことが語られている。
出版不況についての言説を多く目にするが、大手新聞社や出版社の人間あるいはそこそこ売れている小説家のそれは殆ど説得力を感じない。それに対して、ここではとても怖しいことが実証されている。
かつて十万部以上越えていたエロ雑誌も二〇一三年六月号で『ビデオ・ザ・ワールド』が休刊し、『ビージーン』(旧『べッピン』)が二〇一四年十月号で休刊する。
これは単なる活字離れではなく無料でもっと過激な画像を見ることの出来るネット文化の普及のせいだが、エロ雑誌がすべて消えてしまったということは、つまり、活字文化の終焉が近づいているわけだ。その影響は五年後すなわち東京オリンピックが終わる頃に大変なことになっているだろう。恐怖だ。
※週刊ポスト2016年3月4日号




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