【書評】 日本人は容姿への劣等感に対しどう向き合ってきた  『「肌色」の憂鬱 近代日本の人種体験』

【書評】日本人は容姿への劣等感に対しどう向き合ってきたか
NEWSポストセブン2014.09.05 16:00

http://www.news-postseven.com/archives/20140905_274285.html

【書評】『「肌色」の憂鬱 近代日本の人種体験』眞嶋亜有著/中央公論新社/2300円+税

『「肌色」の憂鬱 近代日本の人種体験』(中公叢書)眞嶋亜有著(中央公論新社 2,484円税込)


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明治以降、「西洋化」を追求した日本は、自らの人種的差異をいかに捉えられてきたのか。タブー視されてきたその心性の系譜をたどる。


「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験 (中公叢書)
中央公論新社
眞嶋 亜有

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近代日本の人種体験 中公叢書 眞嶋亜有 中央公論新社発行年月:2014年07月 予約締切日:2014


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・発売日:2014年07月
・著者/編集:眞嶋亜有
・出版社:中央公論新社
・サイズ:単行本
・ページ数:390p
・ISBNコード:9784120046278

【内容情報】
明治以降、「西洋化」を追求、日露戦争後に「一等国」の地位を獲得し、唯一の非西洋国として列強に参入した近代日本。だが、待ち受けていたのは、昂揚する黄禍論、パリ講和会議における人種平等案挿入の失敗、アメリカの排日移民法制定など、西洋からの人種的排除であった。本書は、近代日本が人種的差異をいかに捉えられてきたのか、タブー視されてきたその心性の系譜を、洋行エリートたちの人種体験を通して考察する。

【目次】
序章 近代日本の自己矛盾
第1章 差別化という模倣ー日清戦争後
第2章 “一等国”の栄光とその不安ー日露戦争後
第3章 華麗なる“有色人種”という現実
第4章 「要するに力」-日独伊三国同盟とその前後
第5章 敗戦と愛憎の念
第6章 永遠の差異ー遠藤周作と戦後
終章 近代日本の光と影

【著者情報】
眞嶋亜有(マジマアユ)
ハーバード大学ライシャワー日本研究所アソシエイト、ICUアジア文化研究所研究員、国際日本文化研究センター共同研究員。1976(昭和51)年東京都生まれ。2004年国際基督教大学大学院比較文化研究科博士課程修了。学術博士。日本学術振興会特別研究員、ハーバード大学ライシャワー日本研究所ポストドクトラル・フェロー、法政大学、国際基督教大学講師などを経て現在に至る。専門は近現代日本社会・文化史、比較文化論

【評者】井上章一(国際日本文化研究センター教授)

 手足が長くて、かっこいい人のことを、われわれはしばしばこうもてはやす。あの人は、日本人ばなれしている、と。この言いまわしがなりたつのは、自民族の容姿にたいする評価が、低いからである。われわれが、なんとなく日本人はぶさいくだと感じているからに、ほかならない。

 彼がイケメンなのもとうぜんだ、だってハーフなんだから。とまあ、そんな物言いも、われわれはしばしば耳にする。これも、日本男児のルックスにたいする期待が低いから、なりたつ言いっぷりにちがいない。

 テレビの報道番組は、先進国首脳会議、サミットの様をよくつたえる。そこで見かける日本代表の姿で、せつなく感じたことのある人も、多かろう。欧米の首脳らを前にすると見おとりがする、貧相だな、と。この本は、そういう劣等感に、日本人がどうむきあってきたのかを、おいかける。明治以後にくりひろげられた屈辱の数々をたどっていく、民族史の読み物である。

 近代の日本は、西洋化の途をつきすすんだ。国家や社会のしくみを、西洋に近づける。衣食住をはじめとする暮らしぶりも、あちらによりそわせる。そのことに、国をあげながらつとめてきた。

 しかし、肌の色がちがうことは、かえられない。体格差も、うめきれはしなかった。そのへだたりは、制度設計などの西洋化がすすめばすすむほど、はっきりする。そして、西洋化をめざした指導者や知識人らを、さいなんだ。

 内村鑑三は、この問題をどうのりこえようとしたのか。夏目漱石は、遠藤周作は……。そこを、著者は彼らの精神史へわけいり、きりきざむようにえぐっていく。その過程で、近代日本のエリートたちがこうむった心の傷が、うきぼりにされていく。

 近世以前の日本は、中華文明の周辺に位置していた。ながらく、中国にはあこがれつづけてきたが、しかし容姿についての劣等感はいだいていない。近代以後ならではの暗部をえぐった著作である。

※週刊ポスト2014年9月12日号


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